他力本願から自立へ(記H)

 先週の土、日曜日にボリビア日本語教師がサンタに一同に会して研修会が開かれました。1泊の研修会ですので、先生方にとって一番大きなイベントといってよいでしょう。私は、プログラム作成時点から担当の先生方に助言をして来ましたので、この研修会が先生方にとって有意義なものになったことを喜んでいます。
サンタクルス日本人会館で行われました>

 とにかく、こちらの先生方は、どんな些細なことでも人任せで済ませ、シニアや青年ボランティアにおんぶしている部分が多かったようで、すぐに「お願いします」という言葉が口をついて出てきます。それでは、いつまでたっても立派な教師にはなれないでしょう。ですから、先生方に自立してもらうため密かに作戦を練りました。それは、昨年8月に開かれた研修会の時から、改革に向けて助言してきたことです。特に、低・中・高・特別クラス(日系人の子どものクラス)・普及クラス(ボリビア人の大人クラス)の5つに分かれた分科会では、課題を見つけて1月の研修会には互いに文書発表をやるよう指導しました。それまでの分科会では、情報交換と称してたんなる雑談の会になっていたそうです。主婦が多い日本語教師のことですから分からないこともないのですが、互いに力を高め合うのが研修の目的ではないのかと考え、あえて、口頭発表でなく文書報告としました。
 巡回指導で先生方に会う度に「無理ではないのですよ」と繰り返し言ってきましたが、なんと全員が自分の実践報告書を作成してきたのです。ですから、研修会当日は各分科会とも、時として笑い声がでる和やかな雰囲気の下で活発な話し合いができ先生方自身が充実感を味わい満足された様子でした。今まで「ボリビア日本語教師で教員免許を持っている人は2人しかいません。私たちは頼まれて教師になっただけですから。」と自己弁護をしていた先生方も、ようやっと学ぶ喜びを感じてくれたようです。よかった、よかった。
<分科会での活発な話し合い>

 私は、27日(土)に90分の講和を担当しました。担当校の校長先生に「過去5年間、シニアボランテイアがしてきた内容を教えて下さい。」と10月からお願いしたのに何の返事もなく、業を煮やして11月に再び尋ねた答えは「何でもいいんですよ。私たちは聞かせてもらえればよいのですから。」でした。
そんな受身的態度の先生方を変えるために、またまた作戦を練りました。作戦その2は宿題を出すことでした。1つは、藤原正彦教授の「国家の品格」について400字詰め原稿用紙2枚以上の感想文、普及校の先生は1章を選んで要約をするというものでした。日本人や日系1世の先生方には難しくない宿題でしょうが、2世の方たちは十分な日本語教育を受けていない上、学生時代に日本語の本が身の周りに潤沢にあったわけではありませんので、かなりキツイ課題になるだろうと予測していました。
 案の状、2世の先生だけでなく1世の先生からも「難しすぎる」という声が聞こえてきました。「できなければ、いいのですよ。でも、日本人や1世に聞きながらやれる範囲で読んでみて下さい。」と答えた結果、なんと中には広辞苑、和西辞書、漢和辞典の3冊をボロボロにして読み「最後は面白くなった」と感想文に綴ってくれた2世もいます。「小学校以来この歳になるまで感想文なんて書いたことがなかった。」と話してくれた先生もいます。そうでしょうね。でも、昨年9月には、全員の先生方に「作文の書き方と添削の仕方」について指導しましたよ。子どもたちには行事ごとに作文を書かせているのですから、自らも上手な文章を書かなければいけません。
 宿題その2は、国語の学習指導案と日本語の教案を前もって差し上げ、その2つから国語指導と日本語指導の違いを読み取るというものでした。日本語学校の先生方の中には、教案(外国人に日本語を教える時、日本語教師が書く指導案)というものを今まで見たことがない人たちがかなり居て、「日本語を教える時には、こんなに大変なものを作らなければいけないのですか。」とか「国語指導には考察が大事なのですね。」と気が付き、いつも指導案なしで教壇に立っている先生方にはかなりの刺激になったようです。2月はボリビアの学校の新学期です。今年度は、私の研修が活かされ目標に合った授業をされるよう願っています。
<ブラジルから講師が来てくれました>