アンボロ国立公園は自然の宝庫(記H)

 サンタ県には、OTUQUIS,LOMAS DE ARENA,VALLE TUVACAVA,KAA-IYA,NOEL KENPH MERCADO,AMBOROの6つの国立公園があるそうです。サンファンへ行く途中にあるアンボロへは以前から行きたいと思っていました。S青年のお誘いを頂き、5月19日(土)から20日(日)の一泊でアンボロ行きが実現しました。
 旅行で一番のポイントは天気ですが、幸い雨にも打たれず、暑くなく寒くなく絶好の行楽日和に恵まれ、楽しい週末を過ごすことができました。
 7時トルフィ乗り場に集合して出かけました。トルフィとは相乗りタクシーのことで、運転手さんが「ヤパカニ、ヤパカニ」と大声で叫びながら乗り手を見つけ、5人見つかった時点で発車になります。料金は5分の1ですが、どんな人たちと相乗りになるのか分かりません。たとえば、太った人や酔っ払いと一緒になると悲惨です。
 サンタから2時間ブエナ・ビスタ(良い眺め)という所から出発です。サンファンから参加の青年を待つ間に、LOS SANTOS DES POJORIOS という1694年創建の古い教会へ行きました。レンガ造りの教会は、高くそびえる塔と鐘が印象的でした。中庭では、中学生くらいの男女3名がバイオリンの稽古中でした。この国で初めて聴いたその曲はベートーベンの「歓喜の歌」。たとえギコギコのこぎりの様な音楽でも、ベートーベンの第9が生で聴けたのは感激でした。思わずタクトを振りながらアイネン・シェネン・ゲッターと歌ってしまいました。
<男の子の方が上手な演奏でした>

 旅行社の前から4駆に寝袋やテントを積み込んで発車したのが9時20分。途中いくつかの村落を抜けて山の中に入り、アリクイの死体を見るなどしてぬかるみの道に入りました。出発から40分、道が細くなって、いよいよ車は通れないという地点から各自がリュックをしょって歩き始めました。
 現地の人々に遇うと口々に「ブエナス・ディアス」と挨拶を交わすその姿に、日本での登山を思い出しました。たくさんの荷物を馬に積んで町へ売りに行く人々に数名遇いました。それは、坂本九の歌の様に歩かずに常に下を見ながら馬糞を踏まぬよう注意して歩かなければならないことを意味しています。
 でも、美味しい空気を胸いっぱい吸いながら森林浴を楽しみました。途中で川に差し掛かり、運動靴からサンダルに履き替えて川を渡りました。水温は25℃くらいで気持ちよく、一番深いところで膝の少し上まで水がありました。ガイドのフランクリンさんが、案内してくれたので安心でしたが、水が茶色に濁り水深が目で測れない状態でしたので、激流の箇所では滑らないか心配でした。
<童心に返っておんぶされました>

 歩き始めて3kmくらいの地点に小さな村落がありました。1時を過ぎていたので、「お腹が空いた」という私たち4名の声にフランクリン君が一軒の農家に交渉してかまどを借りることになりました。土をこねて盛られたかまどは吹き穴が上に大きく、左右と後ろの合わせて4箇所にあり薪をくべる昔ながらのものです。子ども時代に薪割り経験のある私には、一昔前の日本の生活が懐かしく思い出されました。
 フランクリン君は、「手伝いましょう」という私たちの申し出に「いいですよ」と言って、一人でどんどんスパゲッティを作ってくれました。2ℓの水のボトルに粉ジュースを入れて、即席オレンジジュースも振舞ってくれました。小学生のころにカバヤ・ジュースという粉末ジュースを作って飲んだことを思い出しました。ガイドのフランクリン君は26歳の若さですが、なかなか料理がお上手で、私たちは4食も彼のお世話になりました。土曜の夕食はジャガイモ,人参、とうもろこしの牛乳スープ、日曜の朝食はパンとコーヒー、昼食はごはんとサラダでした。常に客の意向を聞きながらガイドする姿にプロとしての姿勢を感じましたし、テント張りや火の熾し方の手際の良さに、生活の知恵が大事なんだなと改めて思いました。それは、現在、日本の子どもたちが失ってしまったものの1つではないでしょうか。
<このかまどで焼いたパンを買いました>

 多種多様な樹木が生い茂るジャングルの中を片道8kmほど歩いて、午後5時に辿り着いた地点でキャンプをしました。そして、真下にある川の流れの音を聞きながら、キャンプファイアーを囲みました。夕食後、「自然探索に行こう」というフランクリン君の誘いに応じ、漆黒の闇の中でアルマジロピューマの登場を待ちましたが、30分くらいでは何も現れませんでした。その後、川に行きましたがカエルの声がしただけで夜の動物の生態観察は期待したほどではありませんでした。フランクリン君の話では、今までにピューマを1回、足跡を1回見たそうです。イグアスもそうでしたが動・植物の宝庫といわれているアンボロの自然も次第に少なくなりつつあるのかもしれません。
<このテントで参加者4名が寝ました>

 2日目は、荷物を置いて滝見物からスタートです。キャンプ地から30分くらい川を渡り、山を登った所で突然目の前に滝が現れました。高さ50mほどの滝は、ごうごうと流れ落ちるという程ではありませんでしたけれど、十分楽しめました。この滝には名前が無いそうですが、滝壷にはSARDINAと言ういわしに似た魚が50匹くらい泳いでいました。私たちが、おやつに出たオレンジの袋を落としたら一斉に群がり瞬く間に食べてしまいました。魚はこんなものも食べるのかと新発見でした。また、滝壺付近には、5種類のカラフルな蝶々が舞い遊び、南国にいることを実感いたしました。
華厳の滝と比べてください>


 滝見学の後は、昨日の道を引き返し、ひたすら歩き続けました。時折、木立から鳥のさえずりが聞こえるだけで、サンタのうるさい音から離れ、自然の中で自分を取り戻せた2日間でした。
 帰路、ある集落では調度FERIA NARANJA オレンジ祭りをしていました。その地域ではオレンジが名産で収穫の時期にお祭りをするそうです。屋台をはじめ洋服、雑貨、肉や食料品を売る店、子どもたちにはメリーゴーランドや玉突きゲーム機が並んでいました。きっと、その地域の人たちにとって1年に1回のお祭りは、大人から子どもまで心待ちにしている行事なんでしょう。
 ブエナビスタ着は7時。そこで一番美味しいというレストランでピザを食べ、TAXI が無いというのでMICROとTURUHIを乗り継いでサンタへ10時に帰りました。こちらでは、日曜日や夜はTAXIの運行は少なくなります。運転手さんたちは営業中心でなく家族優先だからです。これから、南米を旅行する人は週末と夜の足にはご注意下さい。
<この一本道をひたすら歩きました>