齋藤家の食卓(H記)

 多くの知人や友人から「ボリビアで何を食べているの」「食事は大丈夫」というお問い合わせや心配を頂いた。異国にあって日本食は無理と思ったのかもしれない。海のないボリビアでは新鮮な魚介類にはお目にかかれないし、日系社会がなければ日本野菜の入手も困難だ。
 でも、オキナワやサンファンの移住地があるおかげで私たちは日本食を毎日口にしている。勿論、日本食材が手に入るといっても限りがあるが。7月までは、オキナワ農協が経営するスーパーオキナワで殆どの日本食品を買えた。でも、そのスーパーが店じまいしてからは韓国人や中国人が経営する店で買い物をしている。幸い日本からの客が7月に日本食品を山ほど持って来てくださったので、今はヒジキや昆布の煮物まで楽しんでいる。
 ボリビア人が経営する店が1軒あるが、注意しないと賞味期限を過ぎたものが多く販売されている。以前、海苔を買ったら紫色に変色していた。こちらの店は照明が暗く、その場では分からなかった。次にインスタントラーメンを買ったら賞味期限を半年も過ぎたもので、小さくなっていた。原則こちらでは返品をしないそうだが、封を開ける前だったので店長に掛け合い返品してもらった。その時以来、買い物には眼鏡が必需品となった。
<行きつけの日本食品店(韓国人が経営)>
 左の白いものは豆腐、右下の野菜は白菜。

 ここで、我が家のある日の食卓をご紹介しよう。
<朝食はパン食です>
 パン・コーヒー・野菜サラダ・入り玉子・野菜炒め・ヨーグルト・果物(完熟パイナップル)

 ボリビアでは美味しいコーヒーがないと言われている。コーヒーはユンガスという涼しい地域で栽培されているようだが、歴史も浅くまだまだ実験段階とのこと。JICAはブラジルから専門家を招きブエナビスタという地域の特産品にしようと力をいれている。その専門家の話では「まだまだ思うような品ができない」とのこと。コーヒー愛好家の私たちは、この国で1番美味しいと定評のある「アレキサンダーコーヒー」を買い中国製のコーヒーメーカーで落としている。こちらでは、フィルターコーヒーが少なく、喫茶店では、お湯が入ったカップが運ばれネスカフェのビンがどんと置かれるのが普通である。こちらの人たちは砂糖を3杯も4杯もスプーンに山盛り入れ、「これでは砂糖お湯になっちゃうよ」と私を心配させている。
 そして、ボリビアで美味しいのは牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品である。日本のチーズは、40年も前にチーズを産まれて初めて食べた母が「これは、石鹸だよ」と言った時から進歩がないのは不思議だ。真似の上手な日本人としては、ヨーロッパへ人を派遣して美味しいチーズづくりに力を入れて欲しい。牛がたくさんいるボリビアでは、乳製品はかなり安い。我が家はココナッツ入りのヨーグルト(15円)にチーアというゴマのような健康食品を入れて食べている。高コレステロールに効くとのことで、日系の方が栽培して韓国に輸出している品を分けてもらっている。
 <昼食はごはんです>
焼き魚・カボチャの煮物・きり昆布の煮物・春菊のごまあえ・キュウリの味噌漬け・おにぎり・味噌汁
 
海のないこの国では、川魚しかお刺身で食べられない。冷凍しゃけが買えるので、切り身にして冷凍保存し焼き魚にしている。この日は、たまたまブラジルみやげの干物が手に入ったので焼きました。こちらのカボチャは水っぽくホクホクした北海道のカボチャが懐かしくなります。
 日本人にとって小松菜やほうれん草などの葉物野菜は欠かせないもの。こちらの人たちはサラダくらいしか野菜を食べないので、最初に入植した人たちは日本野菜を植え始め、現在では大根、ごぼう、里芋をはじめ様々な葉物野菜を作っている。おかげで私たちは日本食を楽しめている。
 <夕食はごはんか麺類です>
 豚の生姜焼き・ひじきの煮物・れん根のきんぴら・湯豆腐・大根葉の炒め物・キャベツの浅漬け・たくわん・ごはん

 味噌や醤油(キッコーマン、ブラジル製のもの)は韓国の店で入手できる。移住地の人たちは入植当初から自家製の味噌や醤油を作ってきた。大豆を栽培している移住地では簡単なことだったようだ。私たちはサンファンのHさんより自家製の甘くてまろやかな味のある味噌や醤油を頂いて使っている。今から、日本へ帰ったら一番懐かしくなる物のひとつだ。
 たくわんはサマイパタのAさんの手作り。さっぱりしていて薄味のたくわんである。サマイパタ旅行の時に、私たちは日頃お世話になっているAさんの農場を見学させていただいた。もともとは、トヨタに勤めていて農業とは縁がなかったAさんは、農業を始めた頃、日本から農業関係の書物を取り寄せ勉強したそうだ。でも、気象状況や環境、なによりも土地が違うボリビアでは参考になったものは何もなく失敗の連続だったらしい。ある時、豚をもらってくれという人が在り豚を飼うことになった。作物へ豚の有機肥料を掛けることにより土地が柔らかくなり作物が茂り自然の偉大さを感じたそうだ。それ以来、自然界のバランスを壊さないように、ということは手を掛けずにミミズがいる土地づくりに心がけ手間を省いたおかげで6人いた雇い人を3人に減らし、ようやっと農業で食べていけるようになったとのこと。Aさんの野菜は消毒がしてないので柔らかくて甘みがあり安心していただける。
 こちらのナスやキューリは大きく大味で、日本の野菜にはかなわない。キャベツは大変硬く、千切りキャベツにしては食べられない。必ず、調理前に数分間レンジしている。
 この様に、我が家の食卓は3食とも日本食である。そのおかげか体調は万全で、医者知らずである。
ボリビア料理だけを食べている青年の中には「ニキビができた」「便秘になった」という声が聞かれる。そんな時には、老婆心ながら「温野菜を食べなさい」「油を控えめにしなさい」「コーラーやジュースには相当砂糖が含まれていますよ」と忠告している。
 <青年が宿泊した日には巻き寿司で、Wさんは張り切って里芋とイカの煮物で歓待しました。>