前向きな教師が、学校をそして子どもを変える(記H)

 ボリビアには日本語学校が5校あります。首都ラパスに1校、4校はサンタクルス州にあります。移住地の学校は1世が移住して間もなく建てられました。ラパスやサンタでは日系人に加えて、そこで働く数多くの日本人の子どもが日語校に通っています。普及校と呼ばれるボリビア人対象の夜の日本語学校は、ラパスとサンタに2校あります。ボリビアでは、幼稚園の先生を合わせると総勢49名の教師が日本語指導に携わっています。
 この先生達は、JICAの助成金を受けて、8月、1月(1泊2日)、3月に研修会を催しています。3月16日に今年度最後の研修会が開かれました。私は、1年9ヶ月の活動報告として「ボリビアにおける日本語学校の現状と課題」というテーマで1時間お話しました。
<先生方の前に立つのも最後です>

 山積する課題の中で、皆で考えていかなければならないことの一つに教師の安定確保が上げられます。ボリビア日系2世の中に教師志望者がいないのです。理由は、日本における日本語教師と同様に、日本語教師の報酬が安いことにあります。大黒柱として一家を養うには日本へ出稼ぎに行った方がずっと給料は高いのです。ですから、最近ではインターネットを通して日本へ教師募集をかけています。今年はインターネットを通して、オキナワ校へ2名、サンファンへ1名の方が赴任しました。
<着任して1週間目の先生も参加の研修会>

 次に解決していかなければならない問題は少子化です。今後5年間の新入児童数を調査したところ、なんとオキナワ校は2〜3名、ヌエバ校は1〜3名と児童数が減少していくのです。この背景には、出世率の低下があげられています。以前は、7〜8名出産していた女性が、今では2〜3名しか生まなくなったからです。これは日本と同様に「女性が仕事を持つようになったこと」「教育費にお金がかかること」等が理由だそうです。
 ボリビアの公立校を出て国立大学を卒業するには、然程お金はかかりませんが、日系人は子どもを私学に入学させ、英語、公文、ピアノ、各種スポーツの稽古に通わせる人が殆どです。日本人は、昔も今も教育には熱心なのです。
<課題を受けてパネルデスカッション>

 現状を見る限り、少子化に歯止めはかけられそうもありません。また、オキナワ、ヌエバ両校では、高校、大学進学を考えて、子どもが小学校、中学校入学時にサンタへ母子共に出てしまうケースが増えているそうです。農業や牧畜を営むお父さんは、週末サンタに来るか、毎日サンタから通うかの生活をしいられているのです。「より良い学校、より良い教育」を求める人たちがいるのも事実で、この現象にも歯止めがかかりません。
 こんな厳しい現状の中で、複式授業も増えています。やる気と指導力のあるS先生は、いつでも2学級にふさわしい教材を用意して5分間A学年に指導したらすぐにB学年を指導するという牛若丸のような離れ業をやっていますが、多くの学級では2〜3学年の生徒が一つの教室で、一つの教材で学んでいます。予算の関係とは言え、学年の発達段階に十分な配慮ができていない現実があります。
 この様に様々な課題を抱えながら、先生方は「自分を向上させよう」「新しいものを勉強したい」という願いを持って研修会に集まってきます。今までは、外部講師に頼ることが多かった研修会も、ここ1年で変わりました。先生達が日常の授業で実践したことを持ちより、情報交換したり、教材を使い易く工夫したり、指導案を書いて同じ単元で授業をしてみる等、積極的な取組みが目立ってきました。
 低学年の教師たった3名だけで、各学校の指導に沿った「助詞の使い方」の教材を2年間の研究の後に完成させたことは特筆に価することです。
<分科会では、いつでも活発な意見交換がされます>

 研修の受講者が、幼稚園、日本語学校、普及校に渡るため、全員にとって有意義な研修を組むのは至難の技ですが、沖縄県からの派遣教師2名と私がお手伝いしながら大多数に喜ばれる講話をしてきました。また、研修会後には必ず全員からアンケートを取り、次回につなげるようにしてきました。今回のアンケートの中に「回を重ねるごとに良い研修になっている」という感想が寄せられ、研修会の裏方として働いてきた私もほっとしています。
 これまでの活動には「指導が厳しすぎる」という批判を受けた時もありましたが、アンケートの中には「先生が一生懸命指導して下さったことは、私達のためになることばかりでした。」「どれも最高でした。」「先生の日本語指導、教育に対する熱意がビシビシ伝わりました。」等の意見があり、私がやってきたことは無駄ではなかったと思っています。 
 また、講話後に、配属先の会長より「先生の話はよく分かりました。今後考えていきたいです。」という言葉を頂き、心強く思いました。今後は、さらに保護者、運営委員会、連合会等の応援が頂けるよう願っています。
<ラパスは遠すぎるので全員集合はできません>