スモッグのサンチャゴ(記H)

 イースタ島への行き帰りにサンチャゴに寄り、チリの首都を垣間見た。4月26日サンタ発12:05、サンチャゴ到着18:00。旅行社の話ではブランチかスナックが出るということであったが、それらしい気配もなく、トランジットで寄ったイキケの空港でサンドイッチでもつまもうとレストランへ寄ったが、待てど暮らせど注文した品が出て来ず、ついに搭乗時間になってしまった。持参したスナックは預荷物の中だったため、空腹を抱えてサンチアゴの空港に降り立った。
 和食の朝食も頼める「ホテル・ニッポン」へチェックインして、荷解きもそこそこに斜め前の日本料理店「レストラン・ハポン」へかけ込む。Wさんは「マグロ、マグロ」と叫んでいたので、カウンターに座って寿司を注文。チリ暮らし30年という板長さんが自ら握って下さった。
<現地人の板前も手際よくにぎっていました>

 腹ごしらえをしてから、BALIHAIのショーを見に行く。食事しながらショーを見る形式だが、私達はチリワインの美味しいものを注文してショーだけを楽しんだ。夜10時に始まったショーは、1部がギターとアコーディオンの演奏でチリのフォルクローレが踊られ、2部はポリネシアの踊り。ほら貝と太鼓に合わせてフラダンスや舌を出しながらの踊りが披露された。1部、2部とも最後には会場から客が選ばれて舞台に上がり、プロと一緒に楽しむようになっている。中南米を始め、ドイツ、フランス、クロアチア等の各地からの客が集い、踊りをすることで会場を大いに沸かせてくれた。
<リズム感あふれる踊り>

 4月30日(水)は一日市内観光。まず最初に、宿から歩いて15分のサンタ・ルシアの丘に登る。先住民とスペイン人とが戦った時に、スペインの征服者が建てた要塞跡だそうで、かつては、激しい戦闘が繰り広げられたとは思えないくらい静かな公園に今では生まれ変わっている。高さ70mくらいの丘の頂上まで登って市内を一望したら、朝9時だというのにスモッグがかかって高いビルが少々かすんで見えた。車社会の弊害で仕方ないとは言うものの、サンチャゴのスモッグは有名だそうでタクシー運転手の説明によると、燃料の質の悪さや古い車が多い事が原因になっているらしい。
<丘の途中までエレベータで登れるそうですが、徒歩で登りました>

 丘のすぐ前にあるアルテ・サニーアという民芸品市場をブラブラしながら、ボリビアの民芸品と比べてみた。織物、その織物で出来た小物類など殆どボリビアの品と変わらないものが並んでいたが、チリではラピスラズリーが特産だそうで宝石や置物などがたくさん並んでいた。私は、そこでボリビアにない物を見つけた。それは手作りの皮細工で、店にはブーツからバックまでおしゃれな物が並べられ、全てその店主の創作品であると聞きすぐに買いたくなった。私は店主一押しのサンダルを買い、その夜から室内履として使い始めた。足にぴったり馴染んだサンダルは今、私のお気に入りの一品になっている。
 次に、内装が豪華だという国立劇場へ催し物の問い合わせに寄ったら、係りの人は「今は何もやっていません。」と親切に2008年版のパンフレットを下さった。オペラ、コンサート、ピアノ、バレー、合唱等の年間予定と値段表が書いてあるもので、それによると、ちなみに「ラボエーム」は最高席が$190、一番安い3階のバルコニー席が$10であった。1000円なら学生でも気楽に音楽が楽しめるのに、日本はどうしてコンサートチケットが高いのだろうかと考えてしまった。
 その日の昼食は、メルカードでマリスコを食べようと思っていたら、タクシーの運転手さんに「ダメダメ。あそこは観光客だけ。臭いしそんなに美味しくないよ。」と言われて、彼に教わった店へ行ってみる。フランスに来たのかと間違える程おしゃれなレストランに感激。テーブルクロスは張りのあるビロード布で、テーブル花も本物のバラが活かっているし、ボーイの接客も一流。ボリビアでは決してお目にかかれないレストランに感激して、本日の特別メニュー伊勢エビの丸焼きを奢ることにした。チリ名物の食前酒にほろ酔いながら、チーズのかかったエビをおごそかに味わった。ロブスター程大味でなく、身がしまったエビに舌づつみを打ち、それだけでデザートが食べられないくらい満腹になった2人でした。
<太さ10Cmの大きさの伊勢エビ、醤油味なら更に良かったのに>

 観光客用であってもメルカード・セントロはどんな所か見学のため行ってみました。メルカードは4時までだそうで、私達が到着した3時半には完売した店もあり、すでに床掃除が始まっていました。でも、魚屋さんの威勢のよいのは何処も同じで、おじさん達の働きぶりや話し声に元気をもらいました。
<見たこともない大きな魚>

国立自然史博物館、歴史博物館と駆け足で廻り、最後に大聖堂を見学しました。大聖堂の中にはフランシスコ・ザビエルの木像や「最後の晩餐」の絵があるとガイドブックにあったが、現在は展示されていないそうで残念ながら見られなかった。1558年に建てられた大聖堂は天井が高く荘厳な建物で、カトリックの総本山として市民の精神的支えの場所になっていると感じた。
 聖堂の前では、画家達20名くらいが思い思いの絵を描いて展示即売していた。どの絵も原色でぬりたくられていて色の幅の少ないこと。絵具代節約のためか、その絵を美しいと感じて描いているのか解らないが、人々のお洒落度も原色が多く、日本人の色に対する鋭い感覚は南米の人には理解できないと思ってしまった。でも、その隣でやっていた大道芸には、80人くらいの人が群がり、おじさんの話芸にどの人も大声で笑っていた。南米の青い空の下では、やはり陽気な笑い声が似合うのかもしれない。観光も人間ウオッチングも、駆け足だったけれど充実したサンチャゴの旅だった。
<大聖堂の見事な装飾>

<にぎやかなアルマス広場>